今日は日本でもメジャーになりつつある野球に関する指標の記事を書こうと思います。
セイバーメトリクスというのですが野球においてデータを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価や戦略を考える分析手法です。
1970年代から使われ始めたもので、アメリカ野球学会の略称SABR (Society for American Baseball Research) と測定基準 (metrics) を組み合わせた造語になります。
今回は選手の総合評価指標であるWARについて書いていきたいと思います。
目次
WARとは
それではWARとは一体なんなのかみていきましょう。
Wikipediaによると
WARは、Wins Above Replacementという正式名称が示す通り、「そのポジションの代替可能選手(Replacement)に比べてどれだけ勝利数を上積みしたか」を表す指標である。代替可能選手とは、「平均以下(below average)の実力で、容易に獲得できる(easily obtainable)選手」、すなわち3Aから昇格させたり、ウェーバー経由や後日指名選手(PTBNL)で獲得できる控えレベルの選手を指す。トム・タンゴは「FA市場において最低年俸水準で獲得できる選手、またはトレードにおいて最小限の損失で獲得できる選手」と定義している。
簡単に言うと替えのきく控え選手を使うよりもその選手を使えば何勝多く勝てるかというのを表した数値です。
WARが5と出ているのならばその選手を使えば控え選手を使うよりも5勝多くチームが勝てるというのが分かる指標になります。
算出方法ですがかなり複雑で計算する会社によって多少違うので詳細はWikipediaの算出方法をご参照ください。
リンクを貼っておきます。
見てもらえば分かりますが守備位置による補正もかなり大きいので同じくらいの打撃成績でもキャッチャーやショートだと他のポジションよりもWARの値は大きくなりやすいという特徴があります。
また、メジャーでは「Fangraphs」「Baseball Reference」の2つが出しているWARが有名で、両者を区別するために前者をfWAR、後者をrWARと表記していることがあります。
※fWARでは野手のWARを算出する際に用いる守備指標がUZR、rWARではDRSを用いるという違いがある
投手のWAR算出ではfWARはFIPを用いますがrWARでは失点率をベースに算出するという違いがあります FIPと失点率についてはまた別に記事をだします また、投手のWARを算出する際にrWARは守備指標DRSを用いて守備の影響を考慮するのに対し、fWARはFIPを用いて最初から守備の影響を取り除く等の違いもあります |
このWARが登場したことによって選手を総合的に評価することができるようになりました。
これまでは打撃・守備など個別の指標で評価はできていましたが、この指標ではチームへの貢献度が勝利数の上積みという分かりやすい数値のおかげで投手も野手も同一の指標で比較することができるようになりました。
評価基準
評価 | fWAR | rWAR |
MVP級 | 6.0以上 | 8.0以上 |
スーパースター | 5.0~6.0 | |
オールスター | 4.0~5.0 | 5.0以上 |
好選手 | 3.0~4.0 | |
レギュラー | 2.0~3.0 | |
先発メンバー | 1.0~2.0 | |
控え | 1.0以下 | 0~2.0 |
リプレイスメント | 0未満 | 0未満 |
※リプレイスメントとはそのポジションの代替可能選手とのことで平凡以下の実力で容易に獲得できる選手の事とされています。
WARの注意点
投手と野手の比較が容易にはなりましたがこの指標でWARの数値は投手よりも野手の方が高くなりやすい傾向にあり投手WARと野手WARの比較には疑問が残ります。
また、リリーフ投手はかなり数値が低くなり平均的なリリーフ投手のWARで0.3とされています。
2017年にMVPを獲得したサファテでさえWAR3.6しかありませんでした。
これほどまでにリリーフ投手のWARは低くなってしまうのです。
リリーフの平均が0.3と知っていればWAR3.6がかなり高いというのは分かるのですが何も知らずに野手と比較してしまうととんでもないことになるので注意です。
また、WARを算出する際にUZRやDRSを用いますがその年の平均から評価する相対評価である為に年毎に数値が大きく上下してしまうことがあります。
こういった守備指標はまだ発展途上の段階である為にその指標を組み込んで算出されるWARも完璧な指標であるとは言えないのが現状です。
またUZRやDRSは1年では守備能力評価をすることは困難で能力を評価するには3年ほどのスパンで見る必要がありこれらを組み込んで算出するWARも同様で1シーズンのWARで選手の能力が直接表せられるものでもないというのに注意が必要です。
歴代WARランキング
あまりこういう比較は好ましくはないのですが
やはり気にはなるので見ていきましょう。
歴代シーズンWARランキングベスト10
1位 | 2015年 | 山田哲人 | 12.9 |
2位 | 1961年 | 長嶋茂雄 | 12.8 |
3位 | 1973年 | 王貞治 | 12.3 |
4位 | 1963年 | 長嶋茂雄 | 11.9 |
5位 | 1959年 | 長嶋茂雄 | 11.2 |
6位 | 1966年 | 王貞治 | 10.6 |
7位 | 1968年 | 王貞治 | 10.5 |
8位 | 1970年 | 王貞治 | 10.4 |
9位 | 1958年 | 長嶋茂雄 | 10.4 |
10位 | 1995年 | イチロー | 10.3 |
山田がすごいですね。
2015年は山田が初めてトリプルスリーを達成した年でもあります。
同じ年にトリプルスリーを達成した柳田悠岐も13位の10.1でランクインしています。
そしてこの王さんと長嶋さんのランクインの多さ。
やはり2人は偉大な選手でチームの勝利にも貢献していたというのがよく分かりますね。
まとめ
①WARとは替えのきく控え選手を使うよりもその選手を使えば何勝多く勝てるかというのを表した数値のことである
②投手と野手を同一の指標で比較できる画期的な指標
③投手より野手のWARの方が高くなりやすい傾向にあり単純に比較できるは疑問が残る
④特にリリーフ投手のWARは平均的な選手でも0.3と低くなっている事に注意が必要
⑤WARにはいくつかの算出方法があり使用する指標が違うことがある(野手の守備の指標がUZRかDRSか、投手を評価する際のFIPか失点率かの違い)
⑥1シーズンのWARでその選手の能力が全て測れるような万能な指標ではない
チームの勝利数への貢献度を数値化するというMVPを考える際にはかなり有効な指標であるのには間違いありませんがまだ問題点もあり改善の余地のある指標である点は気を付けてほしいと思います。
これから研究が進めばもっと正確な評価ができる指標が開発されるかもしれませんね。
それでは今回はこの辺で。
おすすめのセイバーメトリクス関連書籍はこちら
本当にあったセイバーメトリクスのサクセスストーリー
もっと野球の指標について知りたい方はこちら